理事長あいさつ
お金の切れ目が命の切れ目と言われたつらい悲しい時代を経て、日本の透析はそれなりに進化して来ていますが、それでも生命予後は健常人の半分で、合併症は避けては通れず、過酷な水分、食事制限が必要です。
透析のない時代に腎臓の医者になり、透析の黎明期から透析にかかわり、悪戦苦闘して「透析の合併症は透析不足によるもの」もしくは「透析のやり方によるもの」であろうと思うに至りました。
日本の血液透析は週3回4時間がスタンダードとされていますが、一週間168時間働いている腎臓の肩代わりをたった12時間で済ますのですから、一滴も尿の出ない患者さんにとっては、厳重な食事管理をしてやっと生命維持が出来る透析量なのです。
CKD(慢性腎臓病)=CVD(慢性心臓病)と言われています。無尿の患者さんにとってはわざわざ慢性心不全の病名をつけなくとも心不全は存在し、心血管合併症を増悪させているのです。透析時間が長ければ長いほど、回数が多いほど合併症対策になると思っていますが、それでも“週3回1回4時間、一生”は気が遠くなるほどの時間です。
人間だれでも6~8時間は寝ますので、寝ている時間を透析に充てるのが合理的だと気が付きました。
そうすれば長時間透析も苦でなく、普通の生活が送れます。患者さんは高い医療費を使っている分、働いて税金を払っていただきたいし、社会貢献をしていただきたいと思っています。
また施設透析ではなく、CAPD同様自宅で血液透析をするという選択肢もあります。
坂井瑠実クリニックグループで現在約70人の方がご自分の家で血液透析をされ、充実したQOLが高い生活を送っておられます。
世界では在宅血液透析が急速に伸びています。アメリカでは週6回3時間の透析、カナダでは週5~6回・6~7時間のオーバーナイト透析が普及し、3000gのベビーが通常分娩できると報告されています。
坂井瑠実クリニックでは、CKD外来に加え週3回の透析はもちろん、隔日透析・週4回透析・PDとHD併用療法等少しでも長い時間の透析及び2日空きがない透析を目指しています。
特に“オーバーナイト透析”は在宅血液透析(HHD)につなげていきやすいので、自立をモットーに自己管理、安全対策に力を入れています。
HHDのトレーニングは通常の透析中に行うことを基本としますが、遠方の方は今のご施設で3回透析を行い、週に1度、または短期集中訓練を行うことも可能です。
患者さんがお元気で合併症の少ない、普通の生活が出来るようサポートするのが長年透析にかかわった透析医の義務であり使命であると考えています。
一人でも多くの方々にご理解が得られることを願っています。 どうぞよろしくお願い申し上げます。
医療法人社団 坂井瑠実クリニック 理事長 坂井瑠実
坂井瑠実プロフィール
内科、腎臓内科、透析科
岐阜県立医科大学卒業後
神戸大学医学部第2内科入局、腎臓グループに所属
腎友会病院院長、住吉川病院院長を経て
平成10年10月 坂井瑠実クリニック開設
内科・腎臓・糖尿病・人工臓器各学会に所属
日本腎臓学会指導医・専門医、日本透析医学会指導医・専門医、医学博士